この本がすごかった(備忘録)
アニマルズ・ピープル (インドラ・シンハ 著 谷崎由依 訳)
自己陶酔を排除した幻視感あふれる本でした。
内容は重たいのですが、生き生きした人物たちと軽やかな話の進め方で一気に読ませます。
主人公はカウフプールという町に住む頭の回転の速い、口の悪い、背中の曲がった青年「動物」。
会社(カンパニ)による化学薬品事故で汚染された貧しい町が舞台です。
鮮やかで、賑わしい人々とカウフプールの喧騒が目の前に立ち上がってくるような描写。貧しさや、後遺症による生きる苦しみが、ごく普通の生活に点々と染みを落としています。
そこに、後遺症で苦しむ人たちのための無料診療所を開こうとアムリカ人のエリがやってくることで話が動き出します。
動物がエリに言った言葉が、無自覚な心に刺さります。
同書247ページ
「そうそう。あのな、オレが心底むかつくのはさ、あんたら外の人間が腫物を触るような目でおれたちを見ることだ。偽善に満ちた優しい声で話しかけてくることだよ。よっぽど惨めに見えるんだろうな」
「だってあなたたちは敬うべき人たちだわ。違う?」エリの声は真剣だった。
「敬ってるからじゃないだろ?おれは人の感情が読めるんだ。あんたらみたいな連中はこういう場所に憧れているのさ。顔じゅうに書いてあるぜ。アムリカ人もヨーロッパ人も、記者も映画監督も、写真家も文化人類学者もみんなそうだ」
読んでよかった。
色鮮やかな表紙絵とインドラ・シンハという名前に惹かれて手に取ってよかった。
インドラ・シンハのHPはこちら。